株式会社トマックサポートセンター

意思決定支援について

障害福祉における意思決定支援とは。基本原則やガイドラインの考え方、具体的な支援手順と実践の工夫まで分かりやすく解説

障害福祉サービスを利用したり日々の暮らしを営む中で、以下のような悩みや迷いを感じたことはありませんか。

言葉での意思疎通が難しい家族の本当の希望をどう汲み取ればよいのか分からない

支援者や家族が良かれと思って決めた進路や生活支援が本人の意思に沿っているか不安である

国が策定した意思決定支援ガイドラインの具体的な進め方を知りたい

判断能力が不十分とされる知的障害や精神障害、認知症のある方であっても、自分らしく生きるための希望や好み、選ぶ権利を持っています。

そうした本人の思いを最大限に引き出し、尊重しながら自己決定を支える取り組みが「意思決定支援」です。

この記事では、意思決定支援の基本概念から、国が定めるガイドラインの原則、従来の支援との違い、具体的な手順、意思を引き出すための工夫までを分かりやすく解説します。

1. 意思決定支援とは。基本の考え方

意思決定支援とは、認知やコミュニケーションに困難を抱える障害のある方が、日々の生活における小さな選択から将来の生活設計まで、自らの意思に基づいて決定できるよう周囲が環境を整え、寄り添いながらサポートすることです。

国(厚生労働省)は「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」を策定し、福祉サービス事業所や相談支援専門員に対し、本人の意思決定を支援の基本姿勢として位置づけることを強く求めています。

障害者権利条約第12条においても「法律の前に等しく認められる権利」が明記されており、他人が代わりに決める「代行決定」から、本人が決めるのを周囲が支える「意思決定支援」への転換が進められています。

2. 従来の支援と意思決定支援の大きな違い

これまでの福祉現場や家庭では、本人の安全や保護を最優先にするあまり、無意識のうちに本人の選択の機会が奪われてしまうケースがありました。

従来の支援(保護や代行決定の傾向)

本人の安全管理や効率を重視する

家族や専門職が客観的に見て最も良いと考える選択肢を提示する

言葉で希望を言えない場合は周囲が代わりに決めてしまう

意思決定支援(本人の自己決定を尊重)

失敗するリスクも含め、本人の経験や挑戦を尊重する

本人の表情や仕草、行動からサインを丁寧に読み取る

本人の意思が推測しにくい場合でも、最善の利益をチームで検討し続ける

3. 意思決定支援ガイドラインが掲げる重要原則

国のガイドラインでは、支援者が心に留めておくべき基本的な原則が示されています。

意思決定能力の推定

どんなに障害が重い方であっても、意思決定を行う能力があることを前提として関わります。できないと決めつけず、分かりやすい情報提供や工夫を行います。

本人の意思の尊重

本人の好みや選好、価値観を何よりも尊重します。支援者側の都合や管理のしやすさを優先してはなりません。

最大限の支援の尽くし

言葉による表現だけでなく、絵カードや実際の体験など、あらゆる手段を用いて本人が意思を表現できるよう粘り強く環境を整えます。

代行決定の回避

安易に家族や支援者が代理で決定することを避け、可能な限り本人が選べる段階まで選択肢を噛み砕いて提示します。

4. 日常の様々な場面における意思決定のレベル

意思決定支援は、大きな人生の決断だけを指すものではありません。日々の暮らしの積み重ねが重要です。

日常的な生活の選択(小さな自己決定)

今日着る服をどちらにするか選ぶ

夕食のおかずを肉にするか魚にするか選ぶ

休日に部屋で過ごすか散歩に出かけるか決める

福祉サービスや生活環境の選択(中期的な自己決定)

日中に通う就労移行支援や生活介護の事業所を選ぶ

グループホームに入居するか一人暮らしに挑戦するか決める

利用するヘルパーの曜日や時間帯を決める

人生の重大な選択(長期的な自己決定)

就職先や働き方の希望を固める

医療ケアの選択や終末期の希望を共有する

金銭管理や財産管理の扱いについて方針を決める

5. 意思決定支援の具体的な進め方とステップ

ガイドラインに沿った標準的な進め方の手順です。

ステップ1。意思決定に向けた情報収集とアセスメント

本人の生育歴、趣味や嗜好、快と不快のサイン、過去に喜んでいた経験などを家族や関係機関から丁寧に聞き取り、カルテやシートにまとめます。

ステップ2。分かりやすい情報提供と選択肢の提示

文字だけでなく、写真やイラスト、実物の提示、体験利用などを通じて、本人が直感的に理解しやすい形で選択肢を伝えます。良い面だけでなく、注意すべき点も偏りなく伝えます。

ステップ3。本人の選択と表出の確認

言葉だけでなく、指差し、視線、表情の変化、身体の緊張度合いなどを注意深く観察し、本人が何を選ぼうとしているかを把握します。

ステップ4。関係者によるカンファレンス(チームでの合意形成)

本人の選好が明確でない場合や、本人の希望が安全面で極めて大きなリスクを伴う場合は、相談支援専門員、事業所スタッフ、家族、医療関係者などが集まり、本人にとっての最善の利益を多角的に話し合います。

ステップ5。決定内容の実行とモニタリング

決定した支援内容を個別支援計画に反映して実行します。その後も本人の表情や生活の様子を見守り、必要に応じて計画を見直します。本人の気持ちは時間とともに変わる可能性があるため、柔軟な再検討が不可欠です。

まとめ。小さな選択の積み重ねがその人らしい人生を形作る

意思決定支援は、特別な技術や制度だけを意味する言葉ではありません。

日々の食事や衣服を自分で選ぶこと、自分の居場所を自分で決めることなど、日々の小さな選択の積み重ねこそが、自己肯定感を育み、自分らしい人生を歩む基盤となります。

たとえ言葉で気持ちを伝えられなくても、誰もが快や不快、好きや嫌いのサインを発しています。

周囲の家族や支援者がその小さなサインに気づき、粘り強く耳を傾け、チームで支えていく姿勢を持つことが、誰もが尊厳を持って生きられる社会への第一歩となります。

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